解雇事件の解決手段〜訴訟・仮処分・審判〜

いかなる手段を選択するか?

 労働事件ではいくつかの争い方があります。解雇事件を例に考えてみましょう。
 典型的な方法は訴訟を起こすやり方です。ちなみに仮処分との対比で通常の訴訟を本訴と言います。
 ところで、解雇は急を要するので、本訴に先立ってしばしば仮処分という手続を取ります。仮処分を起こすのは、勝つ可能性が高くかつ緊急性があるケースです。例えば会社がある労働者の能力不足を理由に解雇してもその理由が薄弱で反論が容易であれば仮処分を起こして早期の勝利を目指します。
 しかし、会社の主張を覆すには相当丁寧な反論が必要であると考えれば、本訴を選びます。また裁判所は労働者が一定の財産を所有しているケースでは必要性(緊急性)が無いとして、仮処分を認めないことがありますので、その場合も本訴を選びます。
 さて、2006年4月から新しい争い方ができました。それが労働審判です。労働審判は、原則3ヶ月以内かつ3回の手続で結論を出します。労働審判は、不服があれば通常の訴訟に移行しますが、2006年4月から2007年3月までの1年間の統計を見ると、全国の申立件数が1163件、東京地裁の申立件数が345件であり、その中の約76%が労働双方が合意して解決する「調停」により終了し、調停ができず裁判所の「審判」となるものが約17%でした。審判を受けたあと、一方が不服申立をしたのは、その半分の8%位のようです。  
 従って労働審判により多くの労働事件が解決しています。また労働審判の多くは調停で解決していますから、妥協による解決を目指すとき選ぶ手続と言えそうです。従って解雇の場合、必ずしも復職を求めず金銭解決でも良いと考えるケースがその好例だと思います。


訴訟(本訴)


 解雇無効・復職を求めるケースでは、地位確認と賃金支払を求める訴状を提出し、会社側は訴状に対する認否と反論を書いた答弁書を提出します。そしてその後双方が準備書面と証拠を提出し、争点をはっきりさせます。そのあと、証人尋問を行いますが、最近は各々の言い分を陳述書という書面で提出したあとで証人尋問を行うので、証人尋問の目的は、相手方の弁護士の反対尋問を受けてそれに耐えられる正しい言い分であるか否かをチェックすることが主な目的となります。
 そして全ての主張と証拠が出揃ったあとで裁判所が判決を出します。
 事件の性質にもよりますが、最近はスピードアップが図られ、1年位で判決まで出るケースが殆どです。また訴訟の中では適宜な時期に和解(裁判所がリードする形での合意解決)の試みが行われます。
 次に一審の判決に不服であれば、高裁に控訴します。けれども最近では控訴審で新たな審理が行われることは稀であり、殆どが一審判決が正しいかどうかをチェックする機関となっています。
 さて、高裁の判決に不服であれば最高裁に上告または上告受理の申立ができますが、新判例が出るような特別のケースを除いては高裁の判決が覆ることはありません。従って、労働事件でも高裁判決が事実上の最終判断になります。

仮処分

 本訴と同様の主張をするわけですが、緊急を要する手続であり、全てがスピードアップします。従って、証人尋問はせず裁判所は書面審理だけで結論(決定という形式)を出します。また先にも述べたとおり、事案が複雑なケースは仮処分に適さず、労働者が相当な資産を持っているような時は必要性なしとされます。
 しかし、今でも私達は、労働事件では仮処分を重要視しています。解雇事件で妥協しても良いケースは仮処分でなく労働審判手続を選択するケースが増えると思いますが、復職を強く望むケースは仮処分の方がマッチしていると考えています。

労働審判

 最初に述べたとおり、2006年4月から2007年3月までの1年間に全国での申立が1163件、平均審理期間は74.2日でした。解雇事件が49%、賃金問題が26%、退職金が7%という割合です。
 労働審判は裁判官1名と労働問題に長年携わった民間人2名の3名が労働審判委員会を構成して判断をします。労働審判を担当する裁判官を労働審判官、2名の民間人を労働審判員と言います。
 労働審判を申し立ててから、40日以内に第1回目の審判期日が開かれ、そのあと第2回目、第3回目が開かれます。3ヶ月以内で終了することが基本です。
 労働審判の大きな目的がスピードアップですから、申立書には全ての主張を詰め込まなければなりません。証拠もまた準備しなければいけません。その準備は依頼者にも弁護士にも相当の負担となることは覚悟しなければなりません。
 しかも第1回目の期日で早くも審判官や審判員から質問が出る等、第1回期日は極めて重要です。第2回期日は証拠を出したり主張を補充する最後の機会と言うべきでしょう。
 このようにスピードが速いので、逆に言えば複雑な事案は審判には向かないと言われています。
 また労働審判では双方の妥協による解決(調停)が重視されるので、依頼者も弁護士も第1回期日前にしっかりと考えを整理し、妥協できる限界点をきちんと決めておく必要があります。第3回期日は、話合の最後のチャンスというべき日程で、この日に調停ができなければ審判官・審判員合議の「審判」となります。
 労働審判の内容に不服であれば、2週間以内に異議申立をすることができ、その場合は通常の訴訟に移行します。訴訟に移行すれば審判は効力を失いますが、現実には訴訟でも審判と同内容の判決が出ることが多いと予想されます。


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