就業規則の不利益変更

就業規則は労働条件の基本法


 多数の労働者を使用する企業では、労働条件は統一的に決定することが当然です。このような統一的・画一的な労働条件をルール化したものが就業規則であり、労基法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、労働時間、休日、賃金、退職金、賞与、労災、懲戒等基本的な労働条件を定めた就業規則を作成し、労基署に届け出ることを求めています。
 また90条は、就業規則を作成または変更する場合は、当該事業場において、労働者の過半数で組織する労働組合が有る場合はその労働組合、無い場合は労働者の過半数代表の意見を聞き、代表者の意見を記した書面を添付して就業規則と共に労基署に届け出なければならないと定めています。

労働条件の不利益変更を認めるための基準は何か。

(1)就業規則を作成し、または変更する場合、使用者は労働組合や労働者の代表が反対しても反対の意見書を添付して労基署に届け出ることが可能です。
 それでは、賃金の大幅切下等労働条件の不利益変更した場合も労基署に届け出れば効力は発生するものでしょうか。もちろん、そうではありません。
 労働条件の不利益変更については、沢山の判例があります。裁判所は就業規則の変更に合理性が有るか無いかで効力の有無をわけています。
 最高裁のリーディングケースである秋北バス事件(最判昭和43年12月25日)は、労働者に不利益な就業規則の変更は当該変更が合理的であるときに限り、個々の労働者が同意しなくても有効であると述べています。その後も多くの判例が出ていますが、同じ考え方をとっています。
 そこで何が合理的な変更となるかを検討しなければなりません。

(2)沢山の判例があると言いましたが、合理性とは何かについて判例が明確な基準をもうけていると断言することはできません。
 一般的に言って@不利益変更の必要性がどれだけあるか、A変更内容自体が妥当なものであるか否か、B不利益の程度が労働者にとって大きいか否か、C代償措置があるか否か、D他社の動向はどうか等が裁判での争点になります。
 そこで以下賃金に関する不利益変更を例に検討してみましょう。

賃金の不利益変更

(1)賃金の不利益変更は常に最も大きな議論となる項目です。今や古い昔となってしまいましたが、バブル崩壊前の日本は年功序列制が基本でした。しかしバブル崩壊で業績が悪化した多くの企業が賃金の切り下げを提案しました。また、この頃から成果主義が急速に普及する中で中高年齢層をねらいうちにした賃金の切り下げも多く見られるようになりました。

(2)第一に企業の業績が著しく悪化したケースでは、一般に賃金の切り下げが認められる可能性は高いと言えます。しかしそのようなケースでも一般従業員の切り下げの前に経営者は業績悪化について責任を取ったか、管理職に対する賃下げが行われたか、賃下げの幅が大きすぎないか、中高年労働者への打撃が不当に大きくないか等個々のケース毎にチェックすべき項目は沢山あります。
 これらの総合評価で賃下げが有効となるか無効となるかが決まります。

(3)次に成果主義の発達により生ずるトラブルがあります。一般に成果主義をとる企業は、賃金源資の総額は変えずに個々の労働者に対する配分を変更します。従って賃金が増える労働者もいれば賃金が下がる労働者も出てきますので、賃金が下がる労働者は当然のように不満を持ちます。
 この問題ではまだ判例は固まっていないと言うべきです。そして多くの判例では、厳格に判断しています。つまり成果主義を取り入れた企業が一部の労働者に対して安易な賃下げをすることを認めないというわけです。その中でノイズ研究所事件控訴審判決(東京高裁平成18年6月22日)は、競争の激しい業界にあって経営環境が次第に厳しくなった企業が成果主義を大胆に取り入れ、一部の従業員の賃金を相当程度下げることも容認できると判断しています。今後の判例の動向を慎重に検討する必要があります。
 これから更に成果主義の問題は多く出てくると思います。

 私達も真剣に取り組むべき分野であると考えています。

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